商圏の範囲は「来店手段」と「来店頻度」で決める
商圏の範囲は、お客さまがどうやって来るか(徒歩・自転車・車・電車)と、どのくらいの頻度で来るかで決まります。毎日のように使う店は近くの人が中心になり、年に数回の店はより遠くから人が来ます。
たとえば、毎朝立ち寄るコーヒースタンドに、車で20分かけて来る人は多くありません。一方、特別な日に使う店や専門性の高い店は、遠くからでも目的を持って来てもらえます。来店頻度が高いほど商圏は狭く、低いほど広くなると覚えておくと判断しやすくなります。
もう1つの軸は、店の前を通る人に頼るかどうかです。駅前や繁華街の店は、商圏の「住民」よりも「通る人」が客の中心になります。この場合は範囲を引くより、通行量と時間帯を重視します。住宅地の店は「範囲の中に何人住んでいるか」、駅前の店は「前を何人通るか」と、主に見る数字が入れ替わると考えると整理しやすくなります。
一次商圏・二次商圏・三次商圏の違い
一次商圏は来店客の多くが住む・働く中心の範囲、二次商圏はその外側で一定の来店がある範囲、三次商圏はさらに外側でたまに来店がある範囲です。売上の大部分は一次商圏から生まれるため、まず一次商圏を正しく見積もることが大切です。
どこで線を引くかに決まった基準はありません。来店客のおおむね半分以上が住む範囲を一次商圏とする考え方が一般的です(目安)。既存店がある場合は、ポイントカードや予約の住所、配達先の分布から実際の範囲を確かめられます。用語の定義は一次商圏・二次商圏・三次商圏でも解説しています。
出店の検討では、一次商圏だけで損益分岐点を超えられるかを、まず確かめるのが安全です。二次・三次商圏からの来店は、広告や口コミで増やせる「上乗せ分」と考えます。一次商圏だけでは足りず、遠くからの来店を前提にしなければ成り立たない計画は、集客の費用がかさみやすくなります。
| 区分 | 位置づけ | 徒歩型の店の例 | 車で来る店の例 |
|---|---|---|---|
| 一次商圏 | 来店客の中心。売上の大部分 | 徒歩5分・半径500m前後 | 車10分圏前後 |
| 二次商圏 | 一定の来店がある外側 | 徒歩10分・半径1km前後 | 車20分圏前後 |
| 三次商圏 | たまに来る、目的来店の範囲 | 自転車・電車で来る範囲 | 車30分圏前後 |
距離と時間は業界で広く使われる目安です。実際の範囲は業態・地形・交通手段で変わります。
徒歩・自転車・車の距離と時間の目安
徒歩商圏は半径500m〜1km程度、自転車商圏は10分圏、車商圏は10〜20分圏が、出店の検討でよく使われる目安です。徒歩の速さは1分あたり80m程度とされるため、徒歩5分はおよそ400m、徒歩10分はおよそ800mになります。
ただし、同じ距離でも実際に歩く時間は場所によって違います。信号待ちが多い市街地や、坂の多い住宅地では、地図上の距離より時間がかかります。高齢の方や小さな子ども連れの方が多い地域では、歩く速さ自体も遅くなります。距離は円で、時間は到達圏で、と使い分けるのが実務的です。
業態ごとの目安は次のとおりです。あくまで出発点として使い、自店の実績や同業の話で補正してください。
| 業態の例 | 主な来店手段 | 一次商圏の目安 | 見るべき数字 |
|---|---|---|---|
| コンビニ・日常の軽食 | 徒歩 | 徒歩5分・半径500m程度 | 居住人口、就業者、通行量 |
| カフェ・定食・居酒屋 | 徒歩・電車 | 半径500m〜1km程度 | 就業者、通行量、夜間比率 |
| 美容室・整骨院・学習塾 | 徒歩・自転車 | 自転車10分圏程度 | 年代別人口、世帯構成 |
| 郊外型の物販・ファミリー向け飲食 | 車 | 車10〜20分圏程度 | 車の到達圏人口、世帯数 |
徒歩1分=80mは不動産の表示で使われる基準です。その他は一般的な目安です。
半径の円ではなく「到達圏」で見る
商圏の範囲は、地図に円を描くだけでなく、実際の道路で何分で来られるかを示す到達圏で確かめるのが正確です。円の中でも、川や線路、大きな道路の向こう側からは来にくいことがあるからです。
到達圏で見ると、交通手段による差がはっきりします。京都タワー周辺の到達圏人口は、徒歩5分で2,429人、徒歩10分で10,532人でした。ところが自転車10分では139,030人、自動車10分では140,826人になります。同じ10分でも、徒歩と自転車では約13倍の差です。
この差は、ターゲットをどこまで広げるかの判断に直結します。徒歩の客だけを想定するのか、自転車や車の客も取り込むのかで、見込める人口は桁が変わります。駐輪場や駐車場の有無も、商圏の広さを左右する要素です。自転車で来てほしいのに停める場所がなければ、実際の商圏は徒歩圏まで縮みます。
| 交通手段 | 5分 | 10分 | 20分 | 30分 |
|---|---|---|---|---|
| 徒歩 | 2,429人 | 10,532人 | 55,021人 | 131,619人 |
| 自転車 | — | 139,030人 | — | — |
| 自動車 | — | 140,826人 | 649,480人 | 1,339,908人 |
出典:商圏カルテ(人口は総務省「国勢調査」)。参考:半径3km の人口は267,009人。「—」は本記事で掲載していない区分です。
範囲を区切る「境界」に注意する
商圏の範囲は、地形や交通の「境界」で途切れることがあります。地図上では近くても、心理的・物理的に渡りにくい場所の向こうは、商圏から外して考えるのが安全です。
境界がある場合は、円の中から境界の向こう側を除いた人口を見積もります。統計を町丁目単位で集計すれば、境界の手前だけを足し合わせることができます。逆に、駅の改札や大きな交差点のように人が集まる場所は、商圏を広げる方向に働きます。境界には「切るもの」と「つなぐもの」の両方があると考えてください。代表的な境界は次のとおりです。
- 川・線路:橋や踏切、地下道が少ないと、向こう側の人は来にくくなります。
- 幅の広い幹線道路:横断歩道が遠いと、徒歩の客にとっては壁になります。車の場合は、右折で入れるかどうかも影響します。
- 坂・高低差:上り坂の先にある店は、徒歩や自転車の客が減りやすくなります。
- 駅の出口・改札の向き:同じ駅前でも、改札から反対側のエリアには人が流れにくいことがあります。
- 学区・行政区の境界:学習塾や子ども向けの業態では、学区が実質的な商圏の境界になることがあります。
駅前・繁華街は「範囲」より「どこから来るか」を見る
駅前や繁華街のように、住む人より訪れる人が多い場所では、周囲の居住人口よりも「客がどこから来ているか」を見るほうが実態に合います。こうした場所では、商圏は円ではなく、鉄道沿線や観光の動きに沿って広がるからです。
京都駅前の半径500mは居住人口4,641人に対し、昼間就業者数27,925人で、昼夜間人口比は6.02倍でした。さらに、この地域で決済した人の居住地は京都府が20.7%、東京都が19.4%で、地元が3割未満でした。このような広域型の場所では、半径500mの住民数だけで判断すると、需要を大きく見誤ります。
場所の性格は、昼夜間人口比による商圏タイプで整理できます。くわしくは商圏タイプ(居住者型・混在型・就業者型・来街者型)をご覧ください。範囲を決めたら、その中の人口を商圏人口の調べ方の手順で確認しましょう。
決めた範囲は、データと現地で検証する
商圏の範囲は一度決めて終わりではなく、データと現地観察で検証し、必要なら引き直します。最初に引いた線は仮説にすぎないからです。開業後も、客の住所や来店手段を定期的に確かめると、チラシを配る範囲や広告の地域設定にも役立ちます。
既存店がある場合は、顧客の住所を地図に落とすのが最も確実な検証方法です。郵便番号や町丁目の単位で集計すれば、個人を特定せずに分布を見られます。新規出店でまだ客がいない場合は、次の手順で確かめます。
- 候補地から徒歩・自転車・車で実際に移動し、何分かかるかを測る
- 途中に渡りにくい道路、坂、踏切がないかを確認する
- 近くの同業店の駐車場で、車のナンバーの地域名を観察する(車で来る業態の場合)
- 平日と休日で、人の流れの向きが変わらないかを見る
- 引き直した範囲で、人口と世帯数をもう一度確認する
商圏の範囲ごとの人口をまとめて確認する「商圏カルテ」
円の範囲と到達圏の両方を自分で集計するのは手間がかかります。商圏カルテは、住所を入れるだけで、半径500m・1kmの居住人口と昼間就業者数、徒歩・自転車・自動車の5・10・20・30分圏の人口をまとめ、24時間以内にPDFでお届けします。
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