商圏人口の調べ方:最初に決める3つのこと
商圏人口を調べる前に、「範囲」「誰を数えるか」「いつの数字か」の3つを決めます。これを決めずに調べ始めると、候補地ごとに違う物差しで数えてしまい、比較ができなくなります。
商圏人口とは、店の商圏の範囲に住む、または働く人の数のことです。一般には住む人の数(居住人口)を指しますが、駅前やオフィス街では働く人の数も同じくらい大切です。調べた数字は、出典と時点、集計した範囲を必ずメモしておきましょう。後から見返したときや、計画書に書くときに、数字の根拠をすぐに説明できます。
- 範囲:半径500m・1kmの円か、徒歩・車で何分の到達圏か。決め方は商圏の範囲の決め方を参照してください。
- 誰を数えるか:住む人(居住人口・夜間人口)か、働く人(就業者・従業者)か、両方か。
- いつの数字か:国勢調査の調査年か、自治体が公開する最新の月か。比べる候補地どうしで時点をそろえます。
商圏人口を調べる4つの方法
商圏人口の調べ方は、e-Stat の数表で集計する、e-Stat の地図機能で集計する、自治体の町丁目別人口を使う、レポート型サービスを使う、の4つです。手間と精度のバランスで選びます。
はじめての方は、まず e-Stat の地図機能か自治体の町丁目別人口で大まかな人数をつかみ、候補地が絞れてから年齢別や世帯別まで細かく集計する進め方がおすすめです。最初から細かく調べると、候補地が多い段階で時間を使い切ってしまいます。無料でできる方法の全体像は商圏調査を無料で行う方法にまとめています。
| 方法 | 費用 | 手間 | 向いている使い方 |
|---|---|---|---|
| e-Stat の数表を集計 | 無料 | 大きい(町丁目ごとに足し算) | 年齢別など細かい項目を自分で集計したい |
| e-Stat の地図機能(jSTAT MAP) | 無料 | 中くらい | 円や範囲を指定して人口を出したい |
| 自治体の町丁目別人口 | 無料 | 小さい | 国勢調査より新しい数字で補正したい |
| レポート型サービス | 有料(無料枠がある場合も) | 小さい | 複数の候補地を同じ形式で比べたい |
出典:総務省「国勢調査」、政府統計の総合窓口 e-Stat。地図機能の内容は変わることがあるため、最新の案内を e-Stat で確認してください。
手順:e-Stat の国勢調査で半径500mの人口を出す
e-Stat で商圏人口を出すには、候補地の周りの町丁目を特定し、その人口を足し合わせます。国勢調査は5年ごとの全数調査で、町丁目などの小地域単位でも人口・世帯・年齢の数字が公開されています。
いちばん迷うのは、円の境界にかかる町丁目の扱いです。円の中に半分以上入る町丁目は全部数え、半分未満は数えない、という簡単なルールでも構いません。より正確にしたい場合は、円に入る面積の割合で人口を按分します。どのルールでも、すべての候補地に同じルールを当てはめることが大切です。
作業は次の順番で進めます。
- 候補地の住所を地図で確認し、半径500mなどの円を描く
- 円にかかる町丁目の名前を書き出す
- e-Stat で国勢調査の「小地域集計」から、該当する市区町村の表を開く
- 書き出した町丁目の人口・世帯数・年齢別人口を抜き出す
- 円の境界にかかる町丁目は、面積の割合で按分するなど、ルールを決めて扱う
- 合計を出し、出典(調査名と調査年)を書き添える
居住人口だけでなく、昼間の就業者も調べる
商圏人口を調べるときは、住む人に加えて、昼間にそこで働く人の数も必ず確認します。駅前やオフィス街では、働く人が住む人の何倍にもなるからです。
働く人の数は、総務省「経済センサス」の従業者数で確認できます。国勢調査にも、通勤・通学による人の出入りを反映した「昼間人口」という集計があります。住む人の数で働く人の数を割った比率を見ると、場所の性格がひと目で分かります。
京都駅前の半径500mでは、居住人口4,641人に対し、昼間就業者数は27,925人でした。比率は6.02倍です。大阪・梅田は30.72倍、神戸・三宮は6.81倍でした。居住人口だけを見ると梅田が最も少ないのに、昼間は10万人を超える人が働いています。
| 地点 | 居住人口 | 昼間就業者数 | 昼夜間人口比 |
|---|---|---|---|
| 京都駅前(京都タワー周辺) | 4,641人 | 27,925人 | 6.02倍 |
| 大阪・梅田 | 3,318人 | 101,938人 | 30.72倍 |
| 神戸・三宮 | 8,539人 | 58,142人 | 6.81倍 |
出典:商圏カルテ(総務省「国勢調査」「経済センサス」をもとに集計)。昼夜間人口比=昼間就業者数÷居住人口(商圏カルテでの算出方法)。
人数の次は「中身」:年齢・世帯・住居を見る
商圏人口は、人数だけでなく中身まで見ることで、はじめて出店判断に使えます。同じ5,000人でも、ファミリー世帯が多い地域と、1人暮らしの若い人が多い地域では、売れるものがまったく違うからです。
国勢調査では、年齢別人口、男女別人口、世帯の人数、住居の種類(持ち家・借家など)を確認できます。京都タワー周辺の半径500mでは、女性比率54.8%、1人世帯73.3%、借家74.2%でした。1人暮らしで借家住まいの人が多い、都心型の住宅構成だと読み取れます。
年齢構成にも注目します。同じ地域では、住民の70代以上が17.3%でした。ただし、この地域で飲食にお金を使った人のうち70代以上は6.6%にとどまっています。住民の構成と、実際に店を使う人の構成は一致しないことがある点に注意してください。
- 1人世帯が多い:少量・短時間・持ち帰りなどのニーズが出やすい
- ファミリー世帯が多い:休日の来店、駐車場、子ども連れへの配慮が重要
- 高齢者が多い:徒歩で来られる距離、段差のない入口が重要
- 借家が多い:住民の入れ替わりがあり、新規客を取り込む施策が効きやすい
円より実態に近い「到達圏人口」も見る
商圏人口は、円の範囲だけでなく、徒歩・自転車・車で何分で来られるかという到達圏の人口でも確認します。実際の来店しやすさは、直線距離より移動時間で決まるからです。
京都タワー周辺では、徒歩5分の人口が2,429人、徒歩10分が10,532人でした。自転車10分では139,030人、自動車10分では140,826人、自動車30分では1,339,908人になります。半径3kmの人口は267,009人です。来店手段を何と想定するかで、見込める人口は桁が変わります。
徒歩10分の10,532人と、自転車10分の139,030人の差は約13倍です。自転車で来てもらえる業態なら、駐輪スペースを確保するだけで見込める人口が大きく広がります。反対に、徒歩の客が中心の業態で自動車30分圏の人口を根拠にすると、需要を過大に見積もることになります。到達圏の人口は、業態の来店手段とセットで読んでください。
到達圏を自分で出すには、地図アプリの経路検索で候補地から主要な方向へ移動時間を測り、その範囲に入る町丁目の人口を足し合わせます。手間はかかりますが、川や線路で区切られる地域では円より実態に近い数字になります。
出典:商圏カルテ(人口は総務省「国勢調査」をもとに集計)。
商圏人口を読むときの3つの注意点
商圏人口は出店判断の土台ですが、それだけで売上が決まるわけではありません。売上は、商圏の人のうち何割が、月に何回来て、いくら使うかで決まります。人口はその計算の出発点にすぎません。読むときは次の3点に注意してください。
1つ目は、人口が多いほど良いとは限らないことです。人口が多い場所は競合も多くなりがちです。2つ目は、調査時点のずれです。国勢調査は5年ごとのため、大きなマンションの完成や再開発があった地域では、自治体の最新の町丁目別人口で補正します。3つ目は、範囲の取り方で数字が変わることです。比べる候補地は、同じ範囲・同じルールで集計してください。
人口の次は、人の流れと客層を確認します。通行量は通行量調査のやり方、人の動きのデータは人流データとはで解説しています。
商圏人口をまとめて調べる「商圏カルテ」
町丁目ごとの足し算や到達圏の集計を自分で行うのは、思った以上に時間がかかります。商圏カルテは、住所を入れるだけで、半径500m・1kmの居住人口と昼間就業者数、昼夜間人口比、徒歩・自転車・自動車の到達圏人口、年齢構成・世帯構成までをPDFにまとめ、24時間以内にメールでお届けします。
商圏人口・到達圏・人口構成・商圏タイプ判定だけを見たい場合はライト版(980円)もあります。はじめての1回は無料(フル版・1社1回まで・自動課金なし)です。内容は客観的な参考資料であり、売上や来店を保証するものではありません。

