人流データとは:人の動きを数で表した推計値
人流データとは、人がいつ、どこを、どのくらい通ったか・滞在したかを数で表したデータです。多くは、スマートフォンの位置情報など、通信会社などのビッグデータをもとに作られた推計値です。
推計値と呼ぶのは、データを提供している一部の人の動きから、全体の人数を統計的に推し量っているからです。個人が特定されないよう、一定の人数にまとめるなどの処理をしたうえで集計されるのが一般的です。
従来、店の前の人通りを知るには、調査員が現地で数えるしかありませんでした。人流データを使うと、現地に行かなくても、曜日や時間帯ごとの傾向を手早くつかめます。出店の検討では、通行量調査の下調べや補完として使われます。
現地での計測は、調査した日のその時間の数字しか分かりません。人流データは、一定期間の動きを集計しているため、平日と休日、昼と夜といった比較がしやすいのが強みです。その一方で、現地の雰囲気や、歩いている人の様子までは分かりません。どちらが優れているかではなく、役割が違うと考えるのが正しい捉え方です。
人流データで分かること
人流データで分かるのは、主に「どこを」「いつ」「どれだけの人が」通ったかです。公的統計が「住む人・働く人の数」を示すのに対し、人流データは「動いている人の数」を示します。駅前や繁華街のように、住む人より訪れる人が多い場所ほど、人流データの価値が高くなります。
| 分かること | 具体的な指標の例 | 出店判断での使い方 |
|---|---|---|
| 道路ごとの通行量 | 歩行者 人/分、車 台/分 | 入口の向き・物件の選択 |
| 時間帯の違い | 昼と夜の通行量、夜間の通行比率 | 営業時間の設定、夜営業の可否 |
| 曜日の違い | 平日と休日の通行量 | 定休日の決定、人員配置 |
| エリア内の動線 | 周辺で最も人が多い道筋 | 候補物件を動線上で探す |
| 季節や行事による変化 | 月ごと・イベント時の増減 | 繁忙期と閑散期の見込み |
取得できる指標は、データの種類や提供元によって異なります。
人流データを使うときの3つの注意点
人流データは便利ですが、推計値であることを理解して使う必要があります。数字をそのまま「確定した人数」として扱うと、判断を誤ることがあります。
大切なのは、数字の「絶対値」よりも「比較」に使うことです。同じデータ・同じ期間・同じ方法で集計した数字どうしなら、道路の面や時間帯の差は信頼して読めます。一方、違う方法で集計した数字や、現地で数えた数字と直接比べると、集計方法の違いが差として表れてしまいます。比べるときは、条件をそろえることを意識してください。
- 推計値である:一部の人の動きから全体を推し量っているため、誤差があります。特に人通りが少ない細い道では、数字がぶれやすくなります。
- 「通った」と「来店した」は別:店の前を通った人が、店に入るとは限りません。入店する割合は、業態や看板の見え方、入口の入りやすさで変わります。
- 期間によって数字が変わる:大型連休や行事、工事などで一時的に増減します。どの期間の数字かを確認してください。
使い方1:道路の面ごとに比べ、入口の向きを決める
人流データの最も実用的な使い方は、同じ区画の道路の面ごとに通行量を比べ、どの面に入口がある物件を選ぶかを決めることです。同じ住所でも、面によって前を通る人の数は大きく違います。
京都タワー周辺の区画では、接している道路の歩行者が南面11.12人/分、北面7.31人/分、東面6.83人/分、西面0.54人/分でした。南面と西面の差は約20.6倍です。地域全体の人通りが多くても、西面に入口がある物件では、その恩恵をほとんど受けられません。
角地の物件なら、どちらの面に入口や看板を向けるかを、この数字で決められます。入口を1か所しか設けられない場合は、通行量の多い面を優先するのが基本です。ただし、車で来る客を想定するなら、車の台数と駐車場への入りやすさも合わせて確認してください。物件を内見する前に面ごとの数字を見ておくと、現地で確認すべき点がはっきりします。
| 道路の面 | 歩行者 | 南面との比較 |
|---|---|---|
| 南面 | 11.12人/分 | 基準 |
| 北面 | 7.31人/分 | 約0.66倍 |
| 東面 | 6.83人/分 | 約0.61倍 |
| 西面 | 0.54人/分 | 約0.05倍(約20.6分の1) |
出典:商圏カルテ(通信会社などのビッグデータによる推計値)。南面の車は2.27台/分。
使い方2:時間帯と曜日の違いで営業時間を考える
人流データを時間帯と曜日に分けて見ると、営業時間や定休日を決める根拠になります。昼に人が多い場所と夜に人が多い場所では、合う業態も違います。
京都タワー周辺の南面では、歩行者が平日10.40人/分、休日12.55人/分で、休日のほうが多くなっていました。観光客や買い物客が休日に増える場所の特徴です。平日中心の業態なら、平日の数字で見込みを立てる必要があります。
夜間の通行比率も場所によって違います。京都駅前は30.5%、大阪・梅田は36.7%、神戸・三宮は34.2%でした。夜の営業を考えるなら、梅田のように夜の比率が高い場所のほうが有利になりやすいと読めます。反対に、夜の比率が低い場所で夜中心の業態を出すなら、昼の来訪者をどう夜の客につなげるかを考える必要があります。
定休日を決めるときも、人流データが役立ちます。人通りが最も少ない曜日を定休日にすれば、売上への影響を抑えながら休みを取れます。人員の配置も、人が多い時間帯に厚く、少ない時間帯に薄くすることで、人件費を無駄なく使えます。
| 地点 | 最寄り道路の歩行者 | 周辺の最大動線 | 夜間の通行比率 |
|---|---|---|---|
| 京都駅前(京都タワー周辺) | 6.83人/分 | 20.9人/分 | 30.5% |
| 大阪・梅田 | 50.37人/分 | 76.8人/分 | 36.7% |
| 神戸・三宮 | 4.92人/分 | 26.5人/分 | 34.2% |
出典:商圏カルテ(通信会社などのビッグデータによる推計値)。
使い方3:エリアの「最大動線」を見つける
人流データは、候補エリアの中で最も人が流れている道筋、つまり最大動線を見つけるのにも使えます。物件を探す前に動線を把握しておけば、効率よく候補を絞れます。不動産会社に物件を相談するときも、「この通り沿いで」と具体的に伝えられます。
神戸・三宮では、最寄り道路の歩行者が4.92人/分だったのに対し、周辺の最大動線は26.5人/分で、約5.4倍の差がありました。京都駅前でも、最寄り道路6.83人/分に対し最大動線は20.9人/分です。同じエリアでも、通り1本の違いで人の流れは大きく変わります。
ただし、最大動線上の物件は家賃も高くなりがちです。目的を持って来てもらえる業態なら1本裏の物件でも成り立ちますが、通りがかりの客に頼る業態では動線上の立地が有利です。業態の性格と家賃のバランスで判断してください。動線の考え方は動線とはでも解説しています。
人流データは、公的統計・決済データと組み合わせる
人流データは単独で使うより、公的統計や決済データと組み合わせると判断の精度が上がります。人流は「動いている人の量」、公的統計は「住む人・働く人の量」、決済データは「お金を使う人の質」を示し、それぞれ見えるものが違うからです。
たとえば京都駅前は、半径500mの居住人口4,641人に対し昼間就業者数27,925人で、昼夜間人口比は6.02倍でした。さらにクレジットカードなどの決済データでは、決済者の居住地が京都府20.7%、東京都19.4%で、地元が3割未満の広域型でした。人流データで見える人通りの多くが、地元の住民ではなく、遠方からの来訪者だと分かります。
このように3種類のデータを重ねると、「どれだけの人が通り、その人たちは誰で、何にお金を使っているか」までつながります。決済データの読み方は決済データで分かる客層とお金の流れをご覧ください。
人流データと客層をまとめて見られる「商圏カルテ」
人流データを自分で入手し、地図に重ねて集計するのは簡単ではありません。商圏カルテは、住所を入れるだけで、前面道路の歩行者と車を道路の面ごとに、平日・休日×昼・夜の時間帯の違いとあわせて示し、公的統計の人口や決済データによる客層まで14ページのPDFにまとめます。24時間以内にメールでお届けします。
はじめての1回は無料(フル版・1社1回まで・自動課金なし)です。人流の数字は推計値を含む客観的な参考資料であり、売上や来店を保証するものではありません。現地での確認と組み合わせてお使いください。

