商圏分析のやり方は7つの手順で進める
商圏分析は、7つの手順を順番に進めると抜け漏れが防げます。いきなり人口を調べ始めると、何人いれば十分なのか判断できません。最初に「自分の店に必要な条件」を決めることが出発点です。
商圏分析とは、候補地の周りの人口・人の流れ・客層・競合を調べ、その場所で商売が成り立つかを判断する作業です。商圏調査や立地分析とも呼ばれます。大切なのは、調べる順番を守ることと、候補地どうしを同じ物差しで比べることの2点です。
| 手順 | やること | 主なデータ | アウトプット |
|---|---|---|---|
| 1 | 業態の条件を決める | 自店や同業の実績、事業計画 | 必要な客数・客層の条件 |
| 2 | 商圏の範囲を決める | 地図、到達圏 | 半径・到達時間の設定 |
| 3 | 人口と就業者を見る | 国勢調査、経済センサス | 居住人口、昼間就業者、昼夜間人口比 |
| 4 | 通行量と時間帯を見る | 人流データ、現地での計測 | 道路の面ごとの通行量、時間帯の差 |
| 5 | 客層と支出を見る | 国勢調査、決済データ | 年代・年収・業種別の支出 |
| 6 | 競合を確認する | 地図、現地観察、経済センサス | 競合の数・位置・価格帯 |
| 7 | 売上の仮説と現地確認 | 1〜6の結果 | 客数×客単価の見込み、チェックリスト |
手順1・2:業態の条件を決め、商圏の範囲を決める
最初の2手順では、「誰に来てほしいか」と「どこから来てもらうか」を決めます。ここが曖昧だと、後の数字をどう読めばよいか分かりません。
業態の条件とは、たとえば「主な客は30〜40代の女性」「平日昼の就業者が中心」「車で来る家族客」といった想定です。あわせて、損益分岐点から逆算した1日の必要客数も書き出しておきます。必要客数は、毎月の固定費を客単価と営業日数で割ると目安が出ます。
商圏の範囲は、業態と来店手段で決めます。徒歩で来る店なら半径500m〜1km程度、自転車なら10分圏、車で来る店なら車10〜20分圏が一般的な目安です。円だけでなく、実際の道路で何分かかるかを示す到達圏も見てください。川や線路、幹線道路で人の流れが切れることがあるからです。くわしくは商圏の範囲の決め方をご覧ください。
手順3:居住人口・就業者・昼夜間人口比を見る
手順3では、商圏の中に住む人と働く人の数を確認し、その比率で場所の性格をつかみます。住む人が多い場所と、働く人が多い場所では、売れるものも混む時間帯も違います。
居住人口は総務省「国勢調査」、事業所と従業者の数は「経済センサス」で確認できます。どちらも政府統計の総合窓口 e-Stat で無料で見られます。調べ方は商圏人口の調べ方で手順を紹介しています。
2つの数字がそろったら、昼夜間人口比(昼間の就業者数÷居住人口)を出します。商圏カルテでは、この比率で商圏を4つのタイプに分けています。京都駅前の半径500mは居住人口4,641人、昼間就業者数27,925人で、比率は6.02倍。来街者型に当たります。
| 商圏タイプ | 昼夜間人口比 | 場所の性格 | 見るべきポイント |
|---|---|---|---|
| 居住者型 | 0.8倍未満 | 住宅地。夜と休日に人がいる | 世帯構成、年代、徒歩・自転車圏の人口 |
| 混在型 | 0.8〜1.5倍 | 住む人と働く人が半々 | 平日と休日の両方の動き |
| 就業者型 | 1.5〜3.0倍 | オフィスや工場が多い | 平日昼の就業者数、休日の落ち込み |
| 来街者型 | 3.0倍以上 | 繁華街・駅前・観光地 | 通行量、時間帯、客の居住地 |
出典:人口・就業者は総務省「国勢調査」「経済センサス」。タイプ区分は商圏カルテの基準です。
手順4:通行量と時間帯を、道路の面ごとに見る
手順4では、店の前を実際に人がどれだけ通るかを、道路の面ごと・時間帯ごとに確認します。商圏全体の人口が多くても、店の前を通らなければ来店にはつながりにくいからです。
同じ区画でも、面によって通行量は大きく違います。京都タワー周辺では、南面の歩行者が11.12人/分、北面が7.31人/分、東面が6.83人/分、西面が0.54人/分でした。南面と西面の差は約20.6倍です。物件の入口がどの面にあるかで、前を通る人の数がまったく変わります。
時間帯の違いも重要です。南面の歩行者は平日10.40人/分に対し、休日は12.55人/分でした。夜間の通行比率は京都駅前で30.5%、梅田で36.7%、三宮で34.2%です。夜の営業を考えるなら、この比率を必ず見てください。通行量の数え方は通行量調査のやり方で解説しています。
手順5:客層とお金の使われ方を見る
手順5では、商圏の人が「誰で、何にいくら使っているか」を確認します。人口の数だけでなく、実際にお金を使う人の特徴を知ることで、価格帯や品ぞろえを決められます。
住んでいる人の構成は国勢調査で分かります。一方、実際にお金を使っている人の構成は、クレジットカードなどの決済データで傾向をつかめます。京都駅前では、飲食の決済者の平均は47.0歳・平均年収545万円でした。同じ飲食でも、業態によって客層ははっきり分かれます。
全国平均との比較も役に立ちます。京都駅前では20代の決済者が16.3%(全国平均9.4%)、年収1,000万円以上が10.9%(全国平均7.5%)でした。若い層と高所得層の両方が平均より厚い場所だと分かります。また決済者の居住地は京都府が20.7%、東京都が19.4%で、地元が3割未満でした。こうした場所では、近所の常連よりも遠方から訪れる人を想定した品ぞろえが合いやすくなります。
| 業態 | 多い性別 | 平均年齢 | 平均年収 |
|---|---|---|---|
| 寿司 | 男性66% | 50.0歳 | 877万円 |
| カフェ・喫茶店 | 女性62% | 47.4歳 | 521万円 |
| 居酒屋・バー | 男性69% | 45.2歳 | 588万円 |
出典:商圏カルテ(クレジットカードなどの決済データ)。現金払いは含まれないため、傾向として読んでください。
手順6・7:競合を確認し、売上の仮説を立てる
手順6・7では、競合の状況を確かめたうえで、「客数×客単価」で売上の仮説を立てます。競合が多いことは、需要がある証拠でもあり、奪い合いの激しさでもあります。
競合は、同じ業態の店の数・位置・価格帯・営業時間を地図と現地で確認します。自店の想定客層と重なる店を中心に見てください。業態が違っても、同じ客の同じ時間を取り合う店は競合になります。たとえば朝のカフェにとっては、コンビニのコーヒーも競合です。競合店の混む時間帯を実際に見ておくと、自店が狙える空き時間も見えてきます。
売上の仮説は、通行量や到達圏人口のうち何割が来店するかを置き、客数を見積もる方法が基本です。来店する割合は業態や立地で大きく違うため、同業の実績や既存店の数字を参考に、楽観・標準・慎重の3パターンで計算しておくと安全です。手順3で計算した必要客数を、慎重パターンでも超えられるかが判断の目安になります。
仮説は1つの数字ではなく幅で持つのがコツです。たとえば「前面道路の歩行者のうち、立ち寄る人の割合」と「到達圏の住民のうち、月に1回来る人の割合」を別々に置くと、通りがかり客と常連客を分けて考えられます。具体的な計算方法は商圏から売上を予測する方法で紹介しています。
手順7の続き:現地で確かめ、結果を1枚にまとめる
最後に、数字で見えたことを現地で確かめ、判断材料を1枚の表にまとめます。統計やデータでは分からない「入りにくさ」「見えにくさ」は、現地でしか確認できません。
現地では、平日と休日、昼と夜に最低1回ずつ行くのが理想です。看板が何m手前から見えるか、入口に段差はないか、駐車場は入りやすいか、周りの店の客層は想定と合うかを確認します。
まとめの表は、金融機関や共同経営者に説明するときにも使えます。数字には必ず出典を添え、「国勢調査による」「推計値」「現地で計測」など、どの方法で得た数字かを区別しておきましょう。根拠がはっきりした資料は、判断の後で振り返るときにも役に立ちます。
- 比較する候補地は、同じ範囲・同じ指標で横に並べる
- 必要客数を満たすかを、楽観・標準・慎重の3パターンで書く
- 数字の出典と時点を必ず書き添える
- 現地で気づいたことは、良い点と懸念点に分けて書く
商圏分析の手順3〜5を自動でまとめる「商圏カルテ」
人口・通行量・客層の集計は、自分で行うと数日かかることもあります。商圏カルテは、住所を入れるだけで、半径500m・1kmの人口、到達圏、前面道路の通行量、時間帯、決済データによる客層、業態の向き不向き判定、現地確認チェックリストまでを14ページのPDFにまとめ、24時間以内にメールでお届けします。
はじめての1回は無料(フル版・1社1回まで・自動課金なし)です。商圏分析の土台づくりにお使いください。なお、内容は客観的な参考資料であり、売上や来店を保証するものではありません。

