商圏調査を無料で行う4つの方法
商圏調査は、公的統計と現地観察を組み合わせれば、お金をかけずにかなりの部分を調べられます。国の統計は誰でも無料で使えるように公開されており、通行量は自分の足と時間で数えられるからです。
ただし、無料の方法にはそれぞれ得意・不得意があります。下の表で、何が分かり、どのくらい手間がかかるかを確認してから始めましょう。おすすめの順番は、統計で人口と就業者を見て候補地を絞り、残った場所だけ現地で通行量と競合を確かめる流れです。
| 方法 | 分かること | 手間の目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| e-Stat(国勢調査) | 居住人口、年齢構成、世帯構成、住居の種類 | 慣れれば数時間 | 調査時点から時間がたっている |
| e-Stat(経済センサス) | 事業所数、従業者数、業種の構成 | 数時間 | 居住人口とは別に集計される |
| 自治体の町丁目別人口 | 最新に近い人口と世帯数 | 1時間程度 | 公開の形式は自治体ごとに違う |
| 現地での通行量計測 | 前面道路の歩行者・車の数 | 1回あたり数時間×複数回 | 天気や行事で数字がぶれる |
| 地図での競合確認 | 同業の店の数と位置 | 1〜2時間 | 閉店・開店の反映が遅れることがある |
出典:総務省「国勢調査」「経済センサス」、政府統計の総合窓口 e-Stat。
方法1:e-Stat の国勢調査で商圏人口を調べる
商圏人口は、政府統計の総合窓口 e-Stat で公開されている総務省「国勢調査」で、無料で調べられます。国勢調査は5年ごとに行われる全数調査で、町丁目や小地域の単位まで人口・年齢・世帯の数字があります。
e-Stat には、統計を地図の上で見られる「地図で見る統計(jSTAT MAP)」という機能もあります。候補地を中心に範囲を指定し、その中の人口などを集計できるため、半径500m・1kmの商圏人口を出すのに便利です。使える機能や手順は変わることがあるため、最新の案内は e-Stat のサイトで確認してください。
数表から自分で集計する場合は、候補地の周りの町丁目を地図で確認し、該当する町丁目の人口を足し合わせます。範囲の端にかかる町丁目をどう扱うかで数字が変わるため、ルールを決めて、どの候補地にも同じルールを使いましょう。くわしい手順は商圏人口の調べ方で解説しています。
方法2:経済センサスと自治体の統計で「働く人」と「最新の人口」を補う
住む人だけでなく働く人の数を知るには、総務省「経済センサス」を使います。事業所の数と従業者の数が地域ごとに分かるため、昼間にどれだけの人がその場所にいるかの目安になります。
オフィス街や駅前では、働く人が住む人を大きく上回ることがあります。京都駅前の半径500mでは、居住人口4,641人に対し昼間就業者数は27,925人でした。国勢調査の人口だけを見ていると、この約6倍の差に気づけません。
国勢調査は5年ごとのため、新しいマンションが建った地域などでは、実際の人口とずれていることがあります。多くの自治体は、住民基本台帳にもとづく町丁目別の人口と世帯数をホームページで公開しています。最新に近い数字で補正するのに役立ちます。公開の形式は自治体ごとに違い、表計算ソフトのファイルやPDFで毎月・毎年更新されていることが多いので、「〇〇市 町丁別人口」などで探してみてください。
方法3:現地で通行量を自分で数える
前面道路の通行量は、現地で自分で数えれば無料で分かります。統計では分からない「店の前を何人通るか」を知る、最も確かな方法です。
数え方の基本は、決まった時間だけ、決まった線を通った人をカウンターで数えることです。たとえば1回15分を、朝・昼・夕・夜の時間帯ごとに数え、1分あたりの人数に直して比べます。平日と休日で少なくとも1日ずつ行いましょう。手元のカウンターがなければ、スマートフォンのメモに「正」の字を書くだけでも十分です。数える時間は短くても、時間帯と曜日を変えて回数を重ねるほうが、場所の実態に近づきます。くわしい手順は通行量調査のやり方にまとめています。
- 数える場所は、物件の入口の正面にする
- 道路の両側を通る人を分けて数える(向かい側の歩道の人は入りにくい)
- 雨の日、行事のある日は避けるか、記録に残す
- 歩行者と自転車、車を分けて数える
- 数えながら、年代や男女、荷物の様子などもメモする
方法4:地図と現地観察で競合を確かめる
競合の数と位置は、地図アプリで同業の店を検索し、現地で実際に確かめることで無料で調べられます。地図に載っている情報は、閉店や開店の反映が遅れることがあるため、現地確認が欠かせません。
見るべきポイントは、店の数だけではありません。価格帯、営業時間、混雑する時間帯、客の年代を観察すると、自分の店が入り込める余地が見えてきます。競合が多い場所は需要がある証拠でもあるため、数だけで良し悪しを決めないことが大切です。
調べた競合は、地図に印をつけて一覧にしておきます。店名の代わりに「A店」「B店」と記号を振り、業態、価格帯、席数や広さの印象、営業時間、混雑する時間を表にまとめると、後で候補地どうしを比べやすくなります。地域の事業所の数は経済センサスでも確認でき、業種ごとの店の多さを大まかにつかむのに使えます。進め方は競合調査のやり方でも紹介しています。
調べた数字の読み方:人口と就業者の「比率」を見る
無料で集めた数字は、人口や就業者の絶対数だけでなく、その比率で読むと場所の性格がはっきりします。特に役立つのが、昼間の就業者数を居住人口で割った昼夜間人口比です。
下の表は、商圏カルテで調べた3地点の半径500mの数字です。3地点とも昼夜間人口比が3倍を超えており、住む人より働く人・訪れる人が多い場所だと分かります。こうした場所では、住民向けの商売よりも、通勤者や来街者に向けた商売が中心になります。
反対に、比率が1倍を下回る住宅地では、夜と休日に人が多くなります。自分で集めた人口と就業者の数からこの比率を計算しておくと、候補地ごとに「誰をお客さまとして想定すべきか」を整理できます。
| 地点 | 居住人口 | 昼間就業者数 | 昼夜間人口比 |
|---|---|---|---|
| 京都駅前(京都タワー周辺) | 4,641人 | 27,925人 | 6.02倍 |
| 大阪・梅田 | 3,318人 | 101,938人 | 30.72倍 |
| 神戸・三宮 | 8,539人 | 58,142人 | 6.81倍 |
出典:商圏カルテ(総務省「国勢調査」「経済センサス」をもとに集計)。昼夜間人口比=昼間就業者数÷居住人口。
無料の方法の限界と、補い方
無料の方法の弱点は、手間がかかることと、客層の支出や時間帯ごとの人の流れが分かりにくいことです。人口などの「量」は公的統計で十分に分かりますが、「誰が何にいくら使っているか」は無料ではほとんど手に入りません。
たとえば京都駅前では、住民のうち70代以上が17.3%いる一方、飲食の決済者のうち70代以上は6.6%でした。住民の年齢構成は国勢調査で無料で分かりますが、実際に店でお金を使っている人の構成は、決済データがないと分かりません。住民の構成だけで客層を想定すると、ずれが生じることがあります。
また、自分で数えた通行量は、その日・その時間の1回分の数字です。曜日や季節による変動まで押さえるには、何度も現地に通う必要があります。無料の方法は「手間を払ってお金を節約する」方法だと理解しておきましょう。
| 項目 | 無料で分かるか | 補う方法 |
|---|---|---|
| 居住人口・年齢構成 | 分かる | — |
| 就業者数 | 分かる | — |
| 到達圏(徒歩・車で何分)の人口 | 手間がかかる | 到達圏を集計できるサービス |
| 前面道路の通行量 | 数えれば分かる(数回分) | 人流データで曜日・時間帯を補う |
| 決済者の年代・年収・居住地 | 分かりにくい | クレジットカードなどの決済データ |
| 業種別の支出の構成 | 分かりにくい | 決済データと全国平均の比較 |
人流は通信会社などのビッグデータによる推計値、支出はクレジットカードなどの決済データを使うのが一般的です。
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