通行量調査とは:店の前を通る人と車を数える調査
通行量調査とは、候補地の前の道路を通る歩行者・自転車・車の数を、時間帯や曜日ごとに数える調査です。商圏の人口が「周りに何人いるか」を示すのに対し、通行量は「店の前を何人通るか」を示します。
駅前や繁華街の店、通りがかりの客が多い業態では、通行量が売上を大きく左右します。人口が多い地域でも、店の前を人が通らなければ、看板を見てもらうことすらできません。逆に、住んでいる人が少ない場所でも、通る人が多ければ商売が成り立つことがあります。
通行量調査には、現地で人が数える方法と、通信会社などのビッグデータによる推計値を使う方法があります。前者は正確ですが手間がかかり、後者は手軽に曜日や時間帯の傾向をつかめます。両方を組み合わせるのが理想です。この記事では、自分で数える方法を中心に、数字の読み方までを順に説明します。
通行量調査のやり方:準備から集計までの7ステップ
通行量調査は、準備・計測・集計の順に進めます。事前に「どこで・いつ・何を数えるか」を決めておくと、数字のばらつきが減り、候補地どうしを比べられるようになります。
1人で数える場合、歩行者と車を同時に数えるのは難しいため、対象ごとに時間を分けるか、2人以上で分担します。人通りの多い場所では、上りと下りを別々に数えると、どちらの方向から人が流れてくるかも分かります。駅からの帰り道の側か、駅へ向かう側かで、立ち寄りやすさが変わるからです。
計測中は、道路工事や近くのイベント、急な雨など、数字に影響する出来事を必ずメモしておきます。後で集計したときに、なぜその回だけ多い・少ないのかを説明できるようにするためです。
- 数える地点を決める:物件の入口の正面。角地なら、接している面ごとに地点を設ける
- 数える対象を決める:歩行者、自転車、車を分ける。必要なら男女や年代の印象もメモする
- 時間帯と曜日を決める:平日と休日を1日ずつ以上。朝・昼・夕・夜に分ける
- 1回の計測時間を決める:15分などに固定する
- 道具をそろえる:数取器(カウンター)、記録用紙、時計
- 計測する:決めた線を横切った人を数え、天気や行事も記録する
- 1分あたりに直して集計する:15分で数えた人数を15で割る
いつ数えるか:時間帯と曜日の選び方
通行量は、自分の店の営業時間と、客が来てほしい時間帯に合わせて数えます。ランチ中心の店が深夜の通行量を数えても、判断材料にはなりません。
時間帯ごとの差は想像以上に大きいものです。夜間の通行比率は、京都駅前で30.5%、大阪・梅田で36.7%、神戸・三宮で34.2%でした。夜の営業を考える店は、夜の時間帯を必ず別に数えてください。
| 時間帯 | 主に通る人 | 特に数えたい業態 |
|---|---|---|
| 朝(通勤時間帯) | 通勤・通学の人 | コーヒースタンド、パン、コンビニ |
| 昼(11時〜14時頃) | 就業者、買い物客 | ランチ営業の店、弁当、カフェ |
| 夕方(16時〜19時頃) | 帰宅途中の人、学生 | 惣菜、スーパー、学習塾 |
| 夜(19時以降) | 飲食・娯楽の人 | 居酒屋、バー、夜営業の店 |
| 休日の昼 | 家族連れ、観光客 | 物販、ファミリー向けの店 |
時間帯の区切りは一般的な目安です。地域の生活リズムに合わせて調整してください。
どこで数えるか:道路の面ごとに分けて数える
通行量は、地域の平均ではなく、物件の入口がある面の道路で数えます。同じ区画でも、道路の面によって通る人の数は大きく違うからです。
京都タワー周辺の区画を例に見てみましょう。接している道路の歩行者は、南面11.12人/分、北面7.31人/分、東面6.83人/分、西面0.54人/分でした。南面と西面では約20.6倍の差があります。同じ住所の物件でも、入口が南に向いているか西に向いているかで、前を通る人の数は別物になります。
車の通行量も同じように面ごとに見ます。車で来る客を想定する場合、台数だけでなく、進行方向から左折で入れるか、右折が必要かも確認してください。中央分離帯がある道路では、反対車線の車はほとんど入れません。歩行者の場合も、向かい側の歩道を通る人は、横断歩道が近くにないと店に入りにくくなります。
物件を内見するときは、入口の向き、看板を出せる位置、どの方向から歩いてくる人に見えるかをあわせて確認しましょう。現地で確認すべき項目は出店前の立地チェックリストにまとめています。
| 道路の面 | 歩行者 | 1時間あたりに換算 | 車 |
|---|---|---|---|
| 南面 | 11.12人/分 | 約667人 | 2.27台/分 |
| 北面 | 7.31人/分 | 約439人 | — |
| 東面 | 6.83人/分 | 約410人 | — |
| 西面 | 0.54人/分 | 約32人 | — |
出典:商圏カルテ(通信会社などのビッグデータによる推計値)。1時間あたりは1分あたりの値を60倍した単純換算。「—」は本記事で掲載していない値です。
数字の読み方:1分あたりの人数で比べる
数えた通行量は、1分あたりの人数に直してから比べます。計測時間が地点や日によって違っても、同じ物差しで比べられるからです。
下の表は、3地点の最寄り道路の歩行者と、周辺で最も人が多い動線の比較です。大阪・梅田は最寄り道路でも50.37人/分と突出しています。一方、京都駅前と神戸・三宮は、最寄り道路より周辺の最大動線のほうが3〜5倍ほど多くなっています。つまり、少し場所を変えるだけで、前を通る人が大きく増える可能性があるということです。
周辺の最大動線とは、そのエリアで最も人が多く流れている道筋のことです。候補物件がこの動線から1本外れているなら、家賃の安さと通行量の少なさを天秤にかけて判断します。目的を持って来てもらえる業態なら1本裏でも成り立ちますが、通りがかりの客に頼る業態では動線上の物件が有利です。
数字は1回の計測で決めつけず、複数回の平均で見ます。天気や行事で大きく変わるため、極端に多い日・少ない日は理由を確かめたうえで扱いましょう。
| 地点 | 最寄り道路の歩行者 | 周辺の最大動線 | 夜間の通行比率 |
|---|---|---|---|
| 京都駅前(京都タワー周辺) | 6.83人/分 | 20.9人/分 | 30.5% |
| 大阪・梅田 | 50.37人/分 | 76.8人/分 | 36.7% |
| 神戸・三宮 | 4.92人/分 | 26.5人/分 | 34.2% |
出典:商圏カルテ(通信会社などのビッグデータによる推計値)。
通行量から来店数を考える
通行量は、そのうち何割が店に入るかを掛けることで、来店数の見込みに変えられます。この割合を入店率と呼びます。入店率は業態、看板の見え方、入口の入りやすさ、店の前の歩道の広さなどで大きく変わるため、決まった数字はありません。
見込みを立てるときは、同業の既存店の実績や経験者の話をもとに、楽観・標準・慎重の3つの入店率を置いて計算します。慎重な入店率でも、損益分岐点に必要な客数に届くかを確かめるのが安全です。
また、平日と休日の差も見込みに反映させます。京都タワー周辺の南面では、歩行者が平日10.40人/分、休日12.55人/分でした。休日に客が増える業態なら、休日の数字で、平日中心の業態なら平日の数字で計算します。くわしい売上の見積もり方は商圏から売上を予測する方法で解説しています。
現地調査と人流データを組み合わせる
現地での計測は「その日・その時間」の正確な数字、人流データは「曜日や時間帯の傾向」をつかむのに向いています。両方を組み合わせると、少ない手間で信頼できる判断材料がそろいます。
たとえば、人流データで平日と休日、昼と夜の傾向をつかみ、特に重要な時間帯だけ現地で数えて確かめる方法があります。現地では、数字では分からない「歩く速さ」「立ち止まりやすさ」「向かい側の歩道から渡れるか」も観察できます。急いで駅へ向かう人が多い道と、ゆっくり買い物を楽しむ人が多い道では、同じ人数でも立ち寄る割合が違います。人流データは推計値なので、現地の様子と食い違う場合は、その理由を考えることが判断の精度を上げます。人流データの仕組みと使い方は人流データとはをご覧ください。
道路の面ごとの通行量が分かる「商圏カルテ」
現地で何日も数えるのは大変です。商圏カルテは、住所を入れるだけで、前面道路の歩行者(人/分)と車(台/分)を道路の面ごとに示し、平日・休日×昼・夜の時間帯の違いまでまとめたPDFを、24時間以内にメールでお届けします。
はじめての1回は無料(フル版14ページ・1社1回まで・自動課金なし)です。現地で数える前の下調べや、数えた結果との見比べにお使いください。数字は推計値を含む客観的な参考資料であり、売上や来店を保証するものではありません。

