競合調査とは?出店前に「選ばれる余地」を確かめる調査
競合調査とは、商圏の中で自店と同じ客を取り合う店を調べ、出店して選ばれる余地があるかを確かめる調査です。商圏分析の中でも、出店判断に直結する重要な工程です。
競合が多いことは、必ずしも悪いことではありません。同じ業態が集まる場所は、その業態の需要がある証拠でもあります。反対に競合がまったくない場所は、需要そのものが少ない可能性もあります。大切なのは、競合の数だけでなく、需要とのバランスと、自店が勝てる切り口があるかです。
競合調査は、商圏の人口や通行量を調べたあとに行うのが効果的です。客の量と中身が分かっていれば、競合と比べて「どの客を取りに行くか」を具体的に考えられます。
調査の結果、条件の良い競合が多く、自店の強みを打ち出しにくいと分かった場合は、出店を見送る判断も立派な成果です。
競合の範囲を決める:同業態だけが競合ではない
競合の範囲は、「同じ客の、同じ目的・同じ時間帯を取り合う店」で決めます。業態の名前が同じかどうかではありません。
たとえば平日のランチなら、定食店とラーメン店、コンビニの弁当、テイクアウト専門店も同じ客を取り合います。美容室なら、同じ価格帯の美容室に加えて、カット専門店も競合になり得ます。まず自店の想定客と利用場面を書き出し、その場面で客が選びそうな店をすべて挙げます。
地理的な範囲は、客の来店手段で決めます。徒歩客中心の店は半径500m〜1km程度、車客中心の店は自動車10〜20分程度の到達圏が、一般的な目安です。範囲の考え方は商圏の範囲の決め方で詳しく解説しています。
迷ったときは、「この店がなかったら、客はどこへ行くか」と考えてみてください。そこで思い浮かぶ店が、実際の競合です。
| 競合の種類 | 例 | 調べる範囲の目安 |
|---|---|---|
| 直接競合 | 同じ業態・同じ価格帯の店 | 想定する商圏全体 |
| 間接競合 | 同じ利用場面で選ばれる別業態の店 | 徒歩客中心なら徒歩5〜10分圏 |
| 大型の集客施設 | 商業施設・大型スーパーなど | 車客中心なら自動車10〜20分圏 |
| 代替手段 | テイクアウト・通販・宅配など | 店舗の範囲にとらわれず確認 |
範囲は一般的な目安です。業態・地域・交通事情によって適切な範囲は変わります。
競合調査の手順(5ステップ)
競合調査は、机の上での洗い出しと、現地での確認を組み合わせて進めます。次の5ステップで進めると、漏れと重複を防げます。
洗い出しでは、店名と住所だけでなく、業態・価格帯・営業時間も同じ表に書き込んでおくと、あとの比較がスムーズです。地図に落とすときは、直接競合と間接競合で色を分けると、どこに店が集まり、どこが手薄かがひと目で分かります。
現地での観察は、ピーク時間と、ピークを外れた時間の両方に行うのが理想です。ピーク時に満席でも、それ以外の時間が空いているなら、時間帯をずらした営業で需要を取れる可能性があります。観察した日時・天気・客の数を記録しておくと、複数の店を公平に比べられます。
- 範囲を決める:業態の来店手段から、徒歩圏・車圏など調べる範囲を決める
- 洗い出す:地図アプリや業種別の店舗情報で、範囲内の競合店をすべて書き出し、地図に落とす
- 基本情報を集める:各店の価格帯・営業時間・席数や規模・品ぞろえを、公開情報で調べる
- 現地で確かめる:ピーク時間に訪れ、客の入り・客層・接客・店の状態を観察する
- 比較して方針を決める:一覧表にまとめ、自店が狙う客層と差別化の切り口を決める
競合店で比べるべき項目
競合店を比べるときは、項目をそろえた一覧表を作ります。印象で比べると、強い店も弱い店も同じに見えてしまうからです。
特に大切なのは、価格帯・客層・混み具合の3つです。価格帯が同じで客層も重なる店は、正面からぶつかる相手です。混み具合からは、その店が需要を取り切れているか、あふれた客がいるかを読み取れます。
一覧表の最後には、自店の欄も作っておきましょう。競合と同じ項目で自店の計画を書き込むと、どの項目で勝てて、どの項目で負けているかが自然に見えてきます。
| 項目 | 調べ方 | 読み取るポイント |
|---|---|---|
| 位置と距離 | 地図に落とす | 自店の候補地との距離、人の流れの上流か下流か |
| 価格帯 | メニュー・料金表、公開情報 | 自店と同じ価格帯か、上か下か |
| 営業時間・定休日 | 公開情報、現地の掲示 | 競合が開いていない時間帯はないか |
| 規模 | 席数・売場の広さ・スタッフ数 | 受け入れられる客の量 |
| 客層 | 現地での観察、口コミ | 年代・性別・1人客か家族か |
| 混み具合 | ピーク時間の観察 | 待ちが出ているか、空いているか |
| 強み・弱み | 口コミ、現地での体験 | 評価されている点、不満が多い点 |
| 立地条件 | 前面道路・視認性・駐車場 | 人の流れや入りやすさで有利か不利か |
需要と競合の数のバランスを見る
競合調査の結論は、「商圏の需要に対して、競合がどれだけ供給しているか」のバランスで考えます。競合の数だけを見ても判断はできません。
需要の大きさは、商圏の人口や働く人の数、通行量、そしてお金の使われ方から読み取ります。商圏カルテのサンプルでは、飲食に回ったお金の割合が、神戸・三宮で16.34%と全国平均の14.0%を上回っていました。京都駅前は5.9%、大阪・梅田は4.12%です。飲食にお金が集まる場所は需要が厚い一方、店も集まりやすく、競争も激しくなると考えられます。
事業所や店舗の数は、総務省の「経済センサス」で地域ごとに確認できます。業種別の事業所数を見ると、その地域にどの業種がどれだけ集まっているかの全体像がつかめます。
同じ「需要が多い」場所でも、その中身は違います。働く人が多い就業者型や来街者型では平日昼や仕事帰りの需要が厚く、住民が多い居住者型では夕方や休日の需要が中心です。競合がどの時間帯の需要を取っているかを、商圏タイプと合わせて読むと、空いている時間帯が見つけやすくなります。
| 需要 | 競合 | 読み方 | 取るべき方針の例 |
|---|---|---|---|
| 多い | 多い | 需要はあるが競争が激しい | 客層や時間帯を絞って差別化する |
| 多い | 少ない | 需要に対して供給が足りない可能性 | 出店の好機。理由がないか念のため確認 |
| 少ない | 多い | 供給過多のおそれ | 慎重に。明確な強みがなければ見送りも |
| 少ない | 少ない | 市場そのものが小さい可能性 | 広域から呼べる業態かを検討 |
出典:総務省「経済センサス」。飲食に回ったお金の割合は商圏カルテの実測サンプル(決済はクレジットカードなどの決済データ)。
競合調査の結果を自店の戦略に活かす
競合調査の目的は、競合を調べることではなく、自店の戦い方を決めることです。一覧表ができたら、「競合が取り切れていない客」と「競合が手薄な時間帯や価格帯」を探します。
たとえば、周辺の競合がどれも夜中心の営業なら、朝や昼に空白があるかもしれません。競合の客層が男性中心なら、女性が入りやすい店づくりに余地があるかもしれません。京都タワー周辺の例では、カフェ・喫茶店の決済者は女性が62%、居酒屋・バーは男性が69%でした。業態ごとの客層の偏りは、差別化の手がかりになります。
客層の読み方は決済データの解説、立地全体の判断は飲食店の立地の選び方も参考にしてください。
差別化の方針が決まったら、それを価格・商品・営業時間・店構えのどこで表すかまで具体的にしておきます。方針が抽象的なままだと、開業後に競合と同じ店になりがちです。
競合調査でよくある失敗
競合調査でよくある失敗は、範囲が狭すぎること、同業態しか見ないこと、一度しか見に行かないことです。
もう1つ注意したいのは、競合の強さを「店の前の人通り」で見誤ることです。同じ通り沿いでも、面する道路によって人通りは大きく違います。京都タワー周辺の例では、同じ区画でも南面と西面で歩行者数に約20.6倍の差がありました。競合店と自店の候補地が、それぞれどの面の人の流れを受けているかも比べてください。
- 範囲が狭い:車で来る客が中心なのに徒歩圏しか見ず、郊外の大型店を見落とす
- 同業態しか見ない:同じ利用場面で選ばれる別業態の店を競合に数えない
- 観察が1回だけ:空いている時間に1度見ただけで「競合は弱い」と判断してしまう
- 将来を見ない:近くで建設中の商業施設や、同業の出店予定を確認しない
商圏カルテで需要側の数字をそろえる
競合調査を正しく読むには、需要側の数字が欠かせません。商圏カルテのフル版では、商圏人口と商圏タイプ、到達圏、前面道路の通行量、業種別の決済者の客層、業種別の売上構成と全国平均の比較、飲食の業態別の客層までを確認できます。競合の一覧表と並べて読むことで、需要と供給のバランスを判断しやすくなります。
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