創業計画書で立地と売上根拠が重視される理由
創業計画書で立地と売上根拠が重視されるのは、まだ実績のない事業の売上を、ほかに確かめる方法が少ないからです。既存の事業なら過去の決算書がありますが、創業ではそれがありません。
そこで読み手は、「この場所にどれだけの客がいるのか」「その客が本当にこの店を使うのか」を計画書から読み取ろうとします。立地の説明が「駅に近い」「人通りが多い」といった印象だけだと、売上の数字との結びつきが弱くなります。
反対に、商圏の人口や通行量、客層を数字で示し、その数字から客数を見積もった流れが書かれていれば、計画の筋道が伝わります。融資の審査の方法や基準は金融機関によって異なりますが、根拠のある計画書は、相談の場でも説明しやすくなります。
融資の可否や審査基準は金融機関ごとに異なります。具体的な内容は、取引を予定している金融機関や商工会議所、専門家にご相談ください。
立地の説明に使える商圏データ
立地の説明には、公的統計と人流・決済のデータを組み合わせるのが効果的です。誰でも出どころを確かめられる数字を使うことがポイントです。
居住人口や世帯構成は、総務省の「国勢調査」で確認できます。働く人の数は「経済センサス」が基礎になります。人の流れは通信会社などのビッグデータによる推計値、客層や支出の傾向はクレジットカードなどの決済データで補えます。
数字は1つだけでなく、複数を組み合わせて示すのがコツです。たとえば居住人口が少ない場所でも、昼間就業者数や通行量が多ければ、別の客層を狙う理由になります。反対に人口が多くても、想定する年代の住民が少なければ、その点を正直に書き、どう補うかを示します。
| 書きたいこと | 使うデータ | 出どころ |
|---|---|---|
| 周りに住む人の数 | 半径500m・1kmの居住人口 | 総務省「国勢調査」 |
| 周りで働く人の数 | 昼間就業者数・昼夜間人口比 | 総務省「経済センサス」「国勢調査」 |
| 来店できる人の数 | 徒歩・自転車・自動車の到達圏人口 | 国勢調査をもとにした集計 |
| 店の前を通る人の数 | 前面道路の歩行者(人/分)・車(台/分) | 人流データ、現地での計測 |
| 想定客がいるか | 年代・性別・年収、来訪元 | 国勢調査、決済データ |
| 競合の状況 | 同業態の店の数と距離 | 地図・現地での確認 |
出典:総務省「国勢調査」「経済センサス」。統計は政府統計の総合窓口 e-Stat で確認できます。
立地の書き方:「事実→読み取り→自分の店との関係」の3段で書く
立地の説明は、データの事実、そこから読み取れること、自分の店にとっての意味、の3段で書くと伝わりやすくなります。数字を並べるだけでは、なぜその場所を選んだのかが伝わりません。
たとえば京都駅前(京都タワー周辺)を例にすると、次のように書けます。数字は商圏カルテの実測値です。
同じデータでも、業態によって書くべき「自分の店との関係」は変わります。たとえば高齢の住民が多い住宅地なら、通いやすさや入りやすさを重視する計画が合います。働く人が多い場所なら、昼の短い休み時間に提供できる体制が説得材料になります。データを自分の店の運営計画につなげて書くことが、立地欄の質を左右します。
- 事実:半径500mの居住人口は4,641人、昼間就業者数は27,925人で、昼夜間人口比は6.02倍。決済者の居住地は京都府20.7%、東京都19.4%。
- 読み取り:住民より働く人と来訪者が中心の来街者型で、地元以外からの客が多い広域型の商圏である。
- 自分の店との関係:初めて訪れる人にも分かりやすい商品構成と看板にし、平日の就業者と休日の来訪者の両方を取り込む計画とする。
売上根拠は「客数×客単価×営業日数」に分解して書く
売上の見込みは、1つの数字で書かず、客数・客単価・営業日数に分けて、それぞれの根拠を書きます。分解すると、どの数字に無理があるかを読み手も自分も確かめられます。
客数は、前面の通行量に入店率をかける方法や、席数に回転数をかける方法で見積もります。客単価は、業態の価格帯と、決済データで見る客の年収水準などを参考に決めます。営業日数は、定休日を引いた実際の日数を使います。
下の表は、計算の流れを示すための例です。数値は説明用の仮の値で、実際の業態や物件の数字に置き換えて使ってください。
客数の見積もりは、複数の方法で計算して突き合わせると信頼性が上がります。席数と回転数から出した客数と、通行量と入店率から出した客数が大きくずれる場合は、どちらかの前提を見直すきっかけになります。
| 要素 | 考え方 | 仮の数値の例 |
|---|---|---|
| 席数 | 物件の広さとレイアウトから決める | 20席 |
| 回転数(1日) | 昼と夜の時間帯ごとに見積もる | 昼1.0回+夜0.8回 |
| 1日の客数 | 席数×回転数 | 20席×1.8回=36人 |
| 客単価 | 価格帯と客層の年収水準から決める | 1,500円 |
| 月の営業日数 | 定休日を除いた日数 | 25日 |
| 月の売上 | 客数×客単価×営業日数 | 36人×1,500円×25日=135万円 |
表の数値は計算の流れを示すための仮の値であり、実際の売上の目安ではありません。
通行量から客数を見積もるときの考え方
通行量を使う場合は、「店の前を通る人のうち、何人が入るか」を考えます。通行量は商圏データで、入店率は業態の経験や類似店の観察から仮定します。
大切なのは、店が実際に面する道路の数字を使うことです。京都タワー周辺の例では、同じ区画に接する道路でも、南面の歩行者が11.12人/分、西面が0.54人/分で、約20.6倍の差がありました。街全体の人出の数字を使うと、客数を大きく見誤るおそれがあります。
時間帯の差も反映させます。南面の歩行者は平日10.40人/分、休日12.55人/分でした。平日と休日で客数を分けて見積もると、計画の精度が上がります。詳しい手順は商圏から売上を予測する方法で解説しています。
入店率は業態や店構えで大きく変わるため、1つの値に決めつけず、高め・標準・低めの3通りで計算しておくと安心です。どの値でも事業が続けられるかを見ておけば、計画の弱点が事前に分かります。
出典:商圏カルテの実測サンプル。人流は通信会社などのビッグデータによる推計値。
書くときの注意点:数字の出どころと「厳しめの想定」
根拠のある計画書にするためには、数字の出どころを明記し、楽観的すぎない想定にすることが大切です。読み手が気にするのは、計画どおりにいかなかったときの備えでもあるからです。
とくに家賃は、売上が下がっても毎月かかる固定費です。家賃が売上に対して重すぎないかは、多くの業種で一般に意識される点です。物件の条件と売上見込みを並べて、無理のない計画かどうかを確かめてください。
- 出典を書く:「総務省『国勢調査』による」「商圏調査レポートによる」など、数字の出どころを添えます。
- 範囲をそろえる:半径500mなのか、徒歩10分圏なのか、どの範囲の数字かを明記します。
- 開業直後は控えめに:認知が広がるまでの数か月は、客数を低めに見積もるのが一般的です。
- 悪い場合も試算する:客数が想定より少ない場合でも、返済と生活費をまかなえるかを確かめます。
- 競合にも触れる:近くの競合と、自分の店が選ばれる理由を書いておくと、計画の現実味が増します。
立地の根拠資料を添付するときのポイント
創業計画書の記入欄は限られているため、詳しいデータは別紙の資料として添えると整理しやすくなります。本文には要点の数字だけを書き、根拠は資料で示す形です。
資料を添えるときは、地図と主要な数字が1枚で分かるページを先頭に置くと、読み手が全体をつかみやすくなります。現地で通行量を数えた場合は、日時と天気、数えた場所も記録して添えましょう。全体の進め方は商圏分析のやり方も参考にしてください。
| 順番 | 載せる内容 | ねらい |
|---|---|---|
| 1 | 地図と要約(商圏タイプ・主要な数字) | 全体像を最初に伝える |
| 2 | 商圏人口・到達圏人口・年齢構成 | 来店できる人の量と中身を示す |
| 3 | 前面道路の通行量と時間帯 | 客数の見積もりの根拠を示す |
| 4 | 客層(年代・年収)と来訪元 | 客単価と商品構成の根拠を示す |
| 5 | 競合の位置と自店の差別化 | 選ばれる理由を示す |
| 6 | 現地確認の記録(日時・天気・写真) | データを現地で確かめたことを示す |
商圏カルテを創業計画書の根拠資料に使う
商圏カルテのフル版は、商圏人口・商圏タイプ・到達圏・前面道路の通行量・時間帯・決済データによる客層までを、出典つきの14ページのPDFにまとめています。創業計画書の立地説明や売上根拠の参考資料として、そのまま添えやすい構成です。
調べたい住所を入れるだけで、24時間以内にPDFをメールでお届けします。はじめての1回は無料(フル版・1社1回まで)です。売上や融資の結果を保証するものではありませんが、計画の根拠を整理する材料としてお使いください。詳しくは商圏カルテのページをご覧ください。

