飲食店の立地は「客層×人の流れ×時間帯」で選ぶ
飲食店の立地選びで最も大切なのは、業態の想定客と、その場所に実際にいる人が一致しているかどうかです。人通りの多さだけでは判断できません。
たとえばランチ中心の定食店なら、平日昼に働く人が多い場所が向きます。夜の居酒屋なら、仕事帰りの人が通る動線上にあるかが大切です。カフェなら、滞在する時間に余裕のある人がどれだけいるかが鍵になります。
立地の失敗は、出店後に取り返すのが難しい失敗です。メニューや接客は後から直せますが、店の場所は簡単には変えられません。だからこそ、契約前に数字で確かめる立地調査が重要になります。
立地を見るときは、業態ごとに「客がどこから、何の目的で来るか」を先に決めておくと判断がぶれません。通勤途中に立ち寄る客なのか、目的を持って遠くから来る客なのかで、見るべき範囲も数字も変わります。前者は前面の通行量、後者は車や電車での到達圏の人口が重要になります。
飲食店の立地で確認すべき5つの視点
立地の判断は、次の5つの視点に分けて確認すると漏れがありません。どれか1つが極端に悪い場合は、ほかが良くても慎重に考えます。
5つの視点は、上から順に確認するのがおすすめです。商圏タイプで大枠をつかみ、人の流れと客層で業態との相性を確かめ、最後に競合と収支で事業として成り立つかを判断します。順番を逆にして家賃の安さから物件を探すと、人の流れや客層の確認が後回しになりがちです。
| 視点 | 見る数字・情報 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 商圏タイプ | 居住人口・昼間就業者数・昼夜間人口比 | 住民・就業者・来街者のどれが主な客か |
| 人の流れ | 前面道路の歩行者数・車の台数、時間帯別の通行 | 営業する時間に、店の前を人が通るか |
| 客層 | 決済者の年代・性別・年収、来訪元 | 業態の想定客と一致しているか |
| 競合 | 同業態・近い価格帯の店の数と位置 | 需要に対して店が多すぎないか |
| 収支 | 家賃・保証金・内装費と売上見込み | 家賃が売上に対して重すぎないか |
商圏タイプと業態の相性を確かめる
最初に、候補地の商圏タイプを確認します。商圏タイプとは、昼夜間人口比で「住む人の街」か「働く人・訪れる人の街」かを分けたものです。
住宅地に近い居住者型では、家族連れや近所の常連客が中心になり、夕方から夜と休日に客が集まります。オフィス街の就業者型では、平日昼のランチと仕事帰りが中心で、土日は客が大きく減ることがあります。駅前や繁華街の来街者型では、客数は多いものの、家賃も競合も重くなります。
同じ業態でも、商圏タイプによって営業時間や定休日の組み方が変わります。タイプの詳しい見分け方は商圏タイプの解説をご覧ください。
関西の主要ターミナルを例にとると、京都駅前は昼夜間人口比6.02倍、大阪・梅田は30.72倍、神戸・三宮は6.81倍で、いずれも来街者型です。ただし飲食に回ったお金の割合は、三宮が16.34%と全国平均の14.0%を上回る一方、京都駅前は5.9%、梅田は4.12%でした。同じ来街者型でも、飲食にお金が集まりやすい街かどうかには差があります。
前面道路の通行量は「面ごと」「時間帯ごと」に見る
通行量は、駅や街全体ではなく、店が実際に面する道路で見る必要があります。同じ区画でも、面する道路によって人通りは大きく違うからです。
商圏カルテの京都タワー周辺の例では、同じ区画に接する道路の歩行者数が、南面で11.12人/分、北面で7.31人/分、東面で6.83人/分、西面で0.54人/分でした。南面と西面では約20.6倍の差があります。「駅前だから人が多いはず」と考えて裏側の面を選ぶと、想定よりずっと人が少ないことになりかねません。
時間帯と曜日も確認します。南面の歩行者は平日が10.40人/分、休日が12.55人/分で、休日のほうが多い結果でした。夜の居酒屋なら夜の通行、ランチ店なら平日昼の通行を重視します。調べ方は通行量調査のやり方で詳しく解説しています。
通行量は「多いほど良い」わけでもありません。急いで歩く通勤客ばかりの道では、人数の割に入店が少ないことがあります。人数と合わせて、歩く速さや立ち止まる場所があるかも現地で見てください。
| 接している道路の面 | 歩行者(人/分) | 補足 |
|---|---|---|
| 南面 | 11.12 | 車 2.27台/分。平日10.40人/分、休日12.55人/分 |
| 北面 | 7.31 | — |
| 東面 | 6.83 | — |
| 西面 | 0.54 | 南面の約20.6分の1 |
出典:商圏カルテの実測サンプル。人流は通信会社などのビッグデータによる推計値。
業態ごとに客層が違う:決済データで確かめる
同じ駅前でも、業態によって集まる客層ははっきり違います。決済データを見ると、業態ごとの客の年代・性別・年収が分かります。
京都タワー周辺の例では、寿司の決済者は男性が66%で平均50.0歳・年収877万円でした。カフェ・喫茶店は女性が62%で平均47.4歳・年収521万円、居酒屋・バーは男性が69%で平均45.2歳・年収588万円です。同じ場所でも、寿司は高単価、カフェは女性中心と、客層がまったく異なります。
自分の業態の想定客を書き出し、候補地の決済者の客層と比べてみてください。年収の水準は価格帯を決める参考にもなります。
来訪元も確認しておきましょう。京都タワー周辺では、決済者の居住地は京都府が20.7%、東京都が19.4%で、地元が3割に届かない広域型でした。初めて訪れる客が多い場所では、店名より「何の店か」が一目で分かる看板やメニュー表示が効果を発揮します。
| 業態 | 多い性別 | 平均年齢 | 平均年収 |
|---|---|---|---|
| 寿司 | 男性 66% | 50.0歳 | 877万円 |
| カフェ・喫茶店 | 女性 62% | 47.4歳 | 521万円 |
| 居酒屋・バー | 男性 69% | 45.2歳 | 588万円 |
出典:商圏カルテの実測サンプル。決済はクレジットカードなどの決済データ。
競合と家賃:数字で見る判断基準の目安
競合は「多いから悪い」とは限りません。同じ業態が集まる場所は、需要がある証拠でもあります。大切なのは、自分の店が選ばれる理由を作れるかどうかです。
競合を調べるときは、同じ業態だけでなく、同じ時間帯に同じ客を取り合う店も含めます。ランチなら、定食店とラーメン店とコンビニの弁当は競合になり得ます。具体的な手順は競合調査のやり方で解説しています。
家賃は、売上の10%前後に収めるのが飲食業でよく言われる目安です。家賃が重い物件ほど、必要な客数が増えます。保証金や内装費も含めて、何年で回収できるかを試算しておきましょう。
もう1つ見落としやすいのが、食材原価と人件費の合計(いわゆるFLコスト)です。売上の60%程度に収めるのが一般的な目安とされます。家賃とFLコストの両方が重い物件は、売上が少し下がっただけで赤字になりやすいため注意が必要です。
- 徒歩商圏の目安:徒歩で来る客が中心の店は、半径500m〜1km程度が一般的な目安です。
- 家賃の目安:売上の10%前後。これを大きく超える場合は、客単価か客数の見込みを見直します。
- 競合の確認範囲:同業態・同価格帯の店を、徒歩5〜10分圏で数えて地図に落とします。
- 視認性:人の流れの向きから、看板や入口が見えるかを現地で確かめます。
数値は業界で一般に言われる目安です。物件や業態によって適正な水準は異なります。
現地で必ず確かめたいこと
データで候補を絞ったら、最後は現地で確かめます。データは傾向を示しますが、店の入口の見え方や段差、隣の店の雰囲気までは分かりません。
現地確認は、営業を予定する曜日と時間帯に行くのが基本です。平日昼と休日夜など、少なくとも2つの時間帯を見てください。人の流れが店の前を通るのか、手前で曲がってしまうのかといった動線も、現地でこそ分かります。出店前の確認項目は出店前の立地チェックリストにまとめています。
現地では、次の点をメモしておくと、あとで候補地を比べるときに役立ちます。写真も一緒に残しておきましょう。
- 店の前を通る人の向きと、入口・看板の見え方
- 歩道の幅、段差、自転車や車の出入り
- 近くの飲食店の客の入り具合と価格帯
- 夜の照明の明るさと、周囲の店の閉店時間
- ごみ置き場・排気・においなど、近隣との関係で問題になりそうな点
商圏カルテで候補地の数字をそろえる
商圏カルテのフル版では、商圏の人口と商圏タイプ、到達圏、前面道路の面ごとの通行量、平日・休日と昼・夜の時間帯、業種別の決済者の客層、寿司・カフェ・居酒屋などの業態別の客層、業態の向き不向き判定までを14ページにまとめています。
調べたい住所を入れるだけで、24時間以内にPDFをメールでお届けします。はじめての1回は無料(フル版・1社1回まで)なので、気になる物件があれば、契約前の確認にお使いください。詳しくは商圏カルテのページをご覧ください。

