出店前の立地チェックは「データ→現地→収支」の順で行う
出店前の立地チェックは、データで確かめる、現地で確かめる、収支で確かめる、の3段階で進めるのが効率的です。順番を守ると、見に行く物件を絞れるうえ、見落としも減ります。
最初にデータで候補地をふるいにかけます。人口や通行量が業態の条件に届かない物件は、現地に行く前に外せます。次に現地で、データでは分からない入口の見え方や人の流れの向きを確かめます。最後に家賃や初期費用と売上見込みを並べ、事業として成り立つかを判断します。
この記事のチェックリストは、業種を問わず使える共通の項目です。業態によって重みは変わるため、自分の店にとって重要な項目に印をつけてから使ってください。
3段階のうち、どれか1つでも省くと判断が偏ります。データだけでは店の前の実感が分からず、現地だけでは印象に左右され、収支を見なければ続けられるかが分かりません。
データで確かめるチェック項目
データで確かめる項目は、主に「人の量」「人の中身」「競合」の3つです。公的統計と人流・決済のデータで、契約前に机の上で確認できます。
データの項目は、候補地ごとに同じ範囲・同じ出どころの数字で比べることが大切です。ある物件は半径500m、別の物件は徒歩10分圏で比べると、正しい比較になりません。人口の数え方は商圏人口の調べ方で詳しく解説しています。
特に重要なのは、商圏タイプと時間帯の組み合わせです。働く人が多い就業者型の場所で、休日中心の営業を考えると、客が少ない時間に店を開けることになります。データの段階で、営業時間の案と人がいる時間帯が合っているかを確かめておきましょう。
| 分類 | チェック項目 | 判断の目安・見方 |
|---|---|---|
| 商圏人口 | 半径500m・1kmの居住人口 | 徒歩客中心の店は500m〜1km程度が商圏の目安 |
| 商圏人口 | 徒歩・自転車・自動車の到達圏人口 | 想定する来店手段の到達圏で見る |
| 商圏タイプ | 昼間就業者数と昼夜間人口比 | 0.8倍未満は居住者型、3.0倍以上は来街者型(商圏カルテでの区分) |
| 通行量 | 前面道路の歩行者数(人/分) | 店が面する道路の数字で見る |
| 通行量 | 前面道路の車の台数(台/分) | 車客中心の業態では特に重視 |
| 時間帯 | 平日・休日、昼・夜の通行 | 営業予定の時間帯に人がいるか |
| 住民の中身 | 年齢構成・男女比・世帯構成・住居 | 想定客の年代や世帯が多いか |
| 客層 | 決済者の年代・性別・年収 | 業態の想定客と一致しているか |
| 来訪元 | 決済者の居住都道府県 | 地元客中心か、広域客中心か |
| 支出 | 業種別の売上構成と全国平均の比較 | 自分の業種にお金が回っている場所か |
| 競合 | 同業態・近い価格帯の店の数と距離 | 徒歩5〜10分圏などで地図に落とす |
出典:総務省「国勢調査」「経済センサス」。人流は通信会社などのビッグデータによる推計値、決済はクレジットカードなどの決済データ。目安は一般的な経験則です。
現地で確かめるチェック項目
現地で確かめる項目は、データでは見えない「店の前の実際」です。営業を予定する曜日と時間帯に、少なくとも2回は現地を訪れてください。
現地では、データで気になった点を重点的に確かめます。たとえば通行量の数字が低めだった物件なら、なぜ人が少ないのか、近くに人が集まる場所はないかを歩いて探します。データと現地の印象が食い違うときは、日を変えてもう一度確かめると判断を誤りにくくなります。
| 分類 | チェック項目 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 視認性 | 歩行者・車から店の看板が見えるか | 人の流れの向きに沿って、手前から歩いて見る |
| 視認性 | 入口が分かりやすいか | 初めての人の目線で入口を探してみる |
| 動線 | 人の流れが店の前を通るか | 駅・駐車場・大型店からの道筋をたどる |
| 動線 | 手前で曲がる・横断する人が多くないか | 交差点や横断歩道の位置を確認する |
| 入りやすさ | 段差・階段・間口の広さ | ベビーカーや車いすでも入れるかを見る |
| 車の出入り | 駐車場の入りやすさ、右折入庫の可否 | 実際に車で出入りしてみる |
| 周辺環境 | 隣の店の業種と雰囲気 | 客層が近いか、相乗効果があるかを見る |
| 周辺環境 | 夜の明るさと人通り | 夜の時間帯にもう一度訪れる |
| 競合 | 近くの同業店の混み具合と価格帯 | ピーク時間に客の入りを見る |
| 変化 | 工事・再開発・閉店の予定 | 周辺の掲示や自治体の公表資料で確かめる |
物件と収支で確かめるチェック項目
最後に、物件の条件と収支を確かめます。立地が良くても、家賃や初期費用が重すぎれば事業は続きません。
収支の確認では、「この物件で黒字になるには1日に何人の客が必要か」を出しておくと便利です。その人数を、前面の通行量や到達圏の人口と見比べれば、目標に無理がないかを直感的に判断できます。
| 分類 | チェック項目 | 判断の目安・見方 |
|---|---|---|
| 家賃 | 売上見込みに対する家賃の割合 | 飲食業では売上の10%前後がよく言われる目安 |
| 初期費用 | 保証金・内装費・設備費の合計 | 何年で回収できるかを試算する |
| 設備 | 電気容量・ガス・給排水・排気 | 業態に必要な設備が入るか |
| 用途 | 業態の営業が認められる物件か | 管理会社や行政窓口に確認する |
| 看板 | 看板の設置可否と大きさ | 貸主の承諾や管理規約、屋外広告の規制を確認する |
| 営業時間 | 建物の開館時間や搬入の制限 | 深夜営業や早朝の搬入ができるかを確認する |
| 契約 | 契約期間・更新・解約の条件 | 専門家に相談して確認する |
| 売上見込み | 客数×客単価×営業日数 | 厳しめの想定でも続けられるか |
| 損益分岐 | 必要な1日の客数 | 通行量や到達圏人口と見比べて無理がないか |
用途の制限や契約内容は、物件と業態によって異なります。管理会社、行政の窓口、専門家に確認してください。
通行量は「面ごと」に確かめる:実測データの例
チェックリストの中でも見落としやすいのが、店が面する道路ごとの通行量です。同じ区画でも、面によって人通りが大きく違うことがあります。
商圏カルテの京都タワー周辺の例では、同じ区画に接する道路の歩行者数が、南面で11.12人/分、北面で7.31人/分、東面で6.83人/分、西面で0.54人/分でした。南面と西面の差は約20.6倍です。「駅前だから大丈夫」と考えず、物件が面する道路の数字を確認してください。
時間帯の差も確かめます。南面の歩行者は平日10.40人/分、休日12.55人/分で、休日のほうが多い結果でした。夜間の通行比率は、京都駅前が30.5%、大阪・梅田が36.7%、神戸・三宮が34.2%です。夜の営業を考える店は、夜の人通りを必ず確認しましょう。通行量の詳しい調べ方は通行量調査のやり方で解説しています。
出典:商圏カルテの実測サンプル。人流は通信会社などのビッグデータによる推計値。
チェックリストの使い方と判断のコツ
チェックリストは、すべての項目に丸がつく物件を探すためのものではありません。弱い項目を把握し、それを補えるかを考えるための道具です。
チェックの結果は、○・△・×の3段階で記録すると、あとで比べやすくなります。×の項目が1つでもあれば、その理由と対策を書き添えておきましょう。
- 業態にとって欠かせない項目に印をつけ、「これが弱ければ見送る」条件を先に決める
- 複数の候補地を同じリストで確認し、結果を横に並べて比べる
- 弱い項目は、営業時間・価格帯・看板などの工夫で補えるかを考える
- 補えない弱点がある物件は、条件が良く見えても見送りを検討する
- 確認した日時・天気・写真を残し、あとで見返せるようにする
よくある見落とし
出店後に「確認しておけばよかった」となりやすいのは、時間帯・面・客層のずれです。データと現地確認の両方で防げます。
たとえば、昼に見学して人通りが多いと感じた物件が、夜にはほとんど人がいないことがあります。また、駅から近くても、人の流れが反対側の出口に向かっていることもあります。客層も同じで、人は多くても想定した年代や性別の客が少ない場合があります。複数の候補を比べる方法は候補地の評価と比較でも紹介しています。
もう1つの見落としは、住民の構成です。京都タワー周辺では、1人世帯が73.3%、借家が74.2%でした。単身者が多く、入れ替わりの多い住宅事情がうかがえます。家族向けの業態を考えるなら、こうした住民の構成も事前に確かめておく必要があります。
商圏カルテでデータの項目をまとめて確認する
商圏カルテのフル版は、データで確かめる項目の多くを14ページにまとめたレポートです。商圏の形、到達圏、住んでいる人、前面道路の面ごとの通行量、平日・休日と昼・夜の時間帯、決済データによる客層と来訪元、業態の向き不向き判定に加え、現地確認チェックリストも付いています。
調べたい住所を入れるだけで、24時間以内にPDFをメールでお届けします。はじめての1回は無料(フル版・1社1回まで)です。内見の前にデータの項目を確認しておくと、現地では見るべきポイントに集中できます。詳しくは商圏カルテのページをご覧ください。

