フランチャイズの候補地評価は「同じものさしで比べる」ことが基本
フランチャイズの候補地評価で大切なのは、複数の物件を同じ項目・同じ範囲・同じデータで比べることです。物件ごとに見る数字がばらばらだと、比較になりません。
フランチャイズでは、本部が出店基準を持っていることが一般的です。商圏人口や駐車場の台数、前面道路の条件などを定め、それに合う物件を紹介したり、加盟者が見つけた物件を審査したりします。この基準は多くの店舗の経験から作られており、加盟者にとって心強い材料です。
一方で、加盟金や内装費、物件の保証金を支払い、借入を返していくのは加盟者自身です。本部の提案を確かめるために、加盟者側でも同じ物件の数字を確認しておくことをおすすめします。数字を持って本部と話すと、説明の内容も具体的になり、納得して判断しやすくなります。
本部の出店基準と、加盟者が自分で確かめたい項目
本部の出店基準は「その業態が成り立つ最低条件」を示すもので、物件ごとの違いまでは表しきれません。加盟者は、基準を満たしているかに加えて「どれだけ余裕を持って満たしているか」を確かめます。
特に、前面道路の通行量と客層は物件ごとの差が大きい項目です。同じ駅前でも、面する道路が1本違うだけで人通りが大きく変わることがあります。
客層も同様です。同じ商圏人口でも、高齢者が多い地域と若い世帯が多い地域では、業態との相性が大きく変わります。年代構成や世帯構成、決済データで見る客の年収などを、本部の想定する客層と照らし合わせてください。
| 項目 | 確認する数字 | 主な調べ方 |
|---|---|---|
| 商圏人口 | 半径500m・1kmの居住人口、到達圏の人口 | 国勢調査をもとにした集計 |
| 商圏タイプ | 昼間就業者数と昼夜間人口比 | 国勢調査・経済センサスをもとにした集計 |
| 通行量 | 前面道路の歩行者(人/分)・車(台/分) | 人流データ、現地での計測 |
| 時間帯 | 平日・休日、昼・夜の通行の違い | 人流データ、現地での計測 |
| 客層 | 年代・性別・年収、来訪元 | 国勢調査、決済データ |
| 競合 | 同業態・近い価格帯の店の数と距離 | 地図・現地での確認 |
| 収支 | 家賃・保証金・内装費、損益分岐点 | 物件資料、本部の収支モデル |
出典:総務省「国勢調査」「経済センサス」。人流は通信会社などのビッグデータによる推計値、決済はクレジットカードなどの決済データ。
候補地を比較する評価表の作り方
候補地の比較には、項目ごとに点数をつける評価表が便利です。点数そのものより、物件ごとの強みと弱みを見える形にすることが目的です。
作り方は次のとおりです。項目の重みは業態によって変えます。たとえば車で来る客が中心の郊外型なら自動車の到達圏人口と駐車場、駅前型なら前面道路の歩行者数を重く見ます。
評価表は、1度作れば次の出店でも使い回せます。出店後の実績と評価点を見比べると、どの項目が売上に効いていたかが分かり、評価表そのものの精度も上がっていきます。複数店舗の展開を考えているなら、早い段階で自分たちの評価表を持つことをおすすめします。
- 評価する項目を決める(上の表の7項目を基本に、業態に合わせて増減する)
- 項目ごとに重みをつける(たとえば最重要3点・重要2点・参考1点)
- 候補地ごとに数字を集め、同じ範囲・同じデータで並べる
- 項目ごとに5段階などで採点し、重みをかけて合計する
- 合計点だけでなく「致命的に弱い項目がないか」を確認する
比較の例:京都駅前・大阪・梅田・神戸・三宮を同じ基準で並べる
同じ基準で数字を並べると、似た印象の候補地でも違いがはっきり見えます。ここでは商圏カルテの実測値で、関西の3つのターミナルを比べてみます。
3地点とも昼夜間人口比が3.0倍を超える来街者型です。しかし最寄り道路の歩行者数は、梅田の50.37人/分に対し、京都駅前は6.83人/分、三宮は4.92人/分と大きく違います。飲食に回ったお金の割合は、三宮が16.34%で全国平均の14.0%を上回る一方、京都駅前は5.9%、梅田は4.12%でした。
つまり、人の量では梅田、飲食への支出の厚さでは三宮、住民の多さでも三宮が目立ちます。どの地点が良いかは業態次第です。こうした違いを数字で並べることが、候補地比較の出発点になります。
| 項目 | 京都駅前 | 大阪・梅田 | 神戸・三宮 |
|---|---|---|---|
| 居住人口 | 4,641人 | 3,318人 | 8,539人 |
| 昼間就業者数 | 27,925人 | 101,938人 | 58,142人 |
| 昼夜間人口比 | 6.02倍 | 30.72倍 | 6.81倍 |
| 最寄り道路の歩行者 | 6.83人/分 | 50.37人/分 | 4.92人/分 |
| 周辺の最大動線 | 20.9人/分 | 76.8人/分 | 26.5人/分 |
| 夜間の通行比率 | 30.5% | 36.7% | 34.2% |
| カードを使った人 | 54.0万人 | 130.0万人 | 64.0万人 |
| 飲食に回ったお金 | 5.9% | 4.12% | 16.34% |
出典:商圏カルテの実測サンプル。飲食に回ったお金の全国平均は14.0%。
最寄り道路と「周辺の最大動線」の差に注目する
候補地の評価で見落としやすいのが、物件の前の道路と、周辺で最も人が多い道路との差です。この差が大きいほど、人の流れから外れた物件だといえます。
上の表で、三宮は周辺の最大動線が26.5人/分あるのに対し、最寄り道路の歩行者は4.92人/分でした。京都駅前も最大動線20.9人/分に対し、最寄り道路は6.83人/分です。街としての人出が多くても、物件の前を通る人は一部に限られることが分かります。
京都タワー周辺では、同じ区画に接する道路でも、南面が11.12人/分、西面が0.54人/分で、約20.6倍の差がありました。フランチャイズの物件を比べるときは、住所が近いというだけで同じ評価にせず、面する道路ごとの数字を確認してください。動線の考え方は動線の解説でも紹介しています。
車で来る客が中心なら「到達圏」の人口で比べる
郊外やロードサイドの候補地は、半径の円ではなく、移動時間で区切った到達圏の人口で比べるのが基本です。道路の混み方や川・線路で、同じ距離でも来やすさが変わるからです。
到達圏とは、徒歩・自転車・自動車で一定の時間内に行ける範囲のことです。半径の円より、実際の来店のしやすさに近い形で商圏を表せます。
京都タワー周辺の例では、徒歩10分圏の人口が10,532人なのに対し、自動車10分圏は140,826人、自動車30分圏は1,339,908人でした。同じ地点でも、どの手段で来る客を想定するかで、対象となる人口は桁が変わります。業態の想定する来店手段を決めてから、その到達圏で候補地を比べてください。詳しくは到達圏の解説をご覧ください。
| 来店手段 | 10分圏 | 20分圏 | 30分圏 |
|---|---|---|---|
| 徒歩 | 10,532人 | 55,021人 | 131,619人 |
| 自動車 | 140,826人 | 649,480人 | 1,339,908人 |
出典:商圏カルテの実測サンプル。徒歩5分圏は2,429人、自転車10分圏は139,030人。
契約前に確認したい注意点
候補地の評価が終わったら、契約の前にもう一度、数字と条件を見直します。フランチャイズは契約期間が長く、途中でやめると負担が大きくなることがあるためです。
また、候補地の評価は「出店しない」判断のためにも使います。条件が合わない物件を見送ることは、失敗を避けるための前向きな判断です。
- 本部の売上予測の根拠を聞く:どの既存店を参考にしたか、商圏の条件が似ているかを確認します。
- 悪い場合の想定も作る:予測より客数が2割少ない場合でも返済できるかなど、厳しめの試算もしておきます。
- 近隣の出店計画を確かめる:同じチェーンや競合の出店予定が、商圏を奪い合わないかを確認します。
- 契約内容は専門家に相談する:テリトリー(出店地域の保護)や中途解約の条件などは、弁護士や中小企業診断士などの専門家に相談してください。
本ページは一般的な情報提供であり、契約や融資についての助言ではありません。
複数の候補地をまとめて調べる
フランチャイズの出店では、1つの物件だけで決めず、複数の候補を比べてから選ぶのが安全です。比べる数が多いほど、良い物件の「相場観」が身につきます。数字のそろえ方は商圏分析のやり方も参考にしてください。
商圏カルテのフル版は、どの住所でも同じ14ページの構成でまとまるため、候補地を横に並べて比べやすいのが特長です。調べたい住所を入れるだけで、24時間以内にPDFをメールでお届けします。はじめての1回は無料(フル版・1社1回まで)で、複数の物件を比べる方には、月100件まで使い放題のサブスク(11月30日までのお申し込みは月額39,800円・1件あたり398円〜)もあります。詳しくは商圏カルテのページをご覧ください。

